初心者のための12ステップ講座:ステップ1「無力を認める」

※12ステッププログラムについての基本的な紹介については、前回の記事をお読みください。

初心者のための12ステップ講座:はじめに

2017年12月13日

ステップ1
「 私たちは嗜癖(アディクション)に対し無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた」

ステップ1は、12ステッププログラムの一番最初のプログラムであり、また一番重要なステップであるとも言える。

というのも、「自分は嗜癖(※アディクション)に対して無力」であるという事を認めないと、基本的に依存症からは回復できないからだ。

※嗜癖(アディクション):わかりやすい言葉で表すと”のめりこむ””はまる”ということ。もともとは習慣的であった行動が、自分の意志でコントロールできなくなる、ブレーキが利かなくなるという状態。やめたくてもやめられない「有害な習慣」のこと。

ほどよくアルコールをたしなむアルコール依存症者がいないように…。
ほどよくパチンコを楽しめるギャンブル依存症者もいないように…。

「ほんのちょっとなら大丈夫」
「ほとぼりが冷めたら、またうまくコントロールできる時がくるんじゃないか?」
「次はほどほどのところでやめよう」

などと思ってはいけない。

依存症から回復するには、100%自分には「その物質・行為を、ほどほどにうまくコントロールする力が全くない」ということを認める必要があるのだ。
ここで重要なのは「全くない」という部分だ。例外はない、ということだ。

それが「無力を認める」ということなのだ。

薬物依存症とは何か?

2018年3月22日

依存症は脳の報酬系が機能不全に陥った「脳の病気」である

依存症は外側からは分かりにくいが、れっきとした「脳の病気」であり、WHOにも認定されている精神疾患のひとつである。
ある特定の物質、行為、人間関係をコントロールできなくなる、「コントロール障害の病気」と思ってもらったらいい。

最初は楽しみのためや、苦痛を和らげるためにしていた行動を続けるうちに、脳内の快楽を感じる「報酬系」と呼ばれる部分がうまく働かなくなって、やがて自分では全くコントロールがきかなくなって、心身がボロボロになるまでその行動を繰り返してしまう病気なのだ。

実際、機械で脳を撮影してみると、依存症者の脳と、健常者の脳では活動の仕方に明確な違いが現れている。


SPECT画像は、脳の代謝量を図にしたものである。
活発に働いている部分は代謝量が多く、代謝量が少ないところはあまり機能していないという事になる。

健常者の脳に比べ、依存症者の脳は脳機能がかなり低下していることが分かる。

引用元:Amenclinic SPECT Gallery

しかも、この病気は長い間、
「意志が弱いから」
「性格に問題があるから」
「反省してないから」、
同じ依存行動を繰り返してしまうのだと思われてきた。

だから家族などの周りの人たちは、患者本人になんとか依存行為をやめさせようとして叱ったり、罰を与えたり、「もう二度とやらないこと」を誓わせたりする。
本人も、その時は「もう絶対にやらない」と決心をしているし、本気でやめたいと思っている。やめるためにあらゆる手を打つ。

しかし、その努力の甲斐もむなしく、何度もスリップ(再発)してしまう。
家族や周囲の人たちの信頼を裏切り、また同じ事を繰り返す。
こうして肉体的、精神的、社会的にボロボロになって、最終的には刑務所か精神病院、あるいは墓場まで行き着く。

ベンゾジアゼピン依存症と報酬系の機能不全について

2017年3月24日

なぜそうなるのかといえば、それは依存症という「病気」を意志の力でやめようとしているからだ。
つまり、「やめ方」が間違っているのだ。

認知症を意志の力でコントロールできるか?

依存症という病気を考える際に、例えば、同じ脳の病気である認知症を例にしてみたらいいと思う。
認知症は、症状が進行すると徘徊や弄便(便を触る)、物を隠す・なくす、暴力などの問題行動が現れてくる。

確かにその事によって本人も苦しむし、家族の負担も大きくなるわけだが、基本的には、
「認知症は脳の病気である」
という知識が広まっているため、
「気合いや根性、本人の意志の力で認知症の症状を抑え込めるはず」
とは普通思われない。

本人の反省が足りていれば認知症の進行が遅くなるわけもないし、心が弱いから問題行動を起こしてしまうわけでもない。

認知症に対処するには、問題行動が起こしてしまっても本人をできるだけ責めず、人格を尊重して、しかるべきケアや治療を受けることが薦められている。
家族についても、家庭内で抱え込むことをせず、介護サービスや相談機関を利用して、少しでも介護の負担を減らすことが大切なこととされている。

つまり、「自力では認知症をコントロールすることはできない」と、本人も家族も認めるところから適切なケアや対処がスタートするわけだ。

依存症も脳の病気なので、きちんとした治療を受ければ回復率はかなり上昇する。

しかし、「依存症は病気である」という認識が広まっていないことと、本人が依存症であることを認めない「否認」がこの病気からの回復を難しくしているのだ。

自分のことを病気だと認めない「否認の病」

依存症は「否認の病」といわれる。

それぐらい、本人自身が依存症であるということを認めたがらない。この病気の最大の特徴のひとつともいえる。

彼らはなんだかんだと言い訳しながら、嗜癖を手放そうとしない。
「やめようと思ったらいつでもやめられる」「これがあるから何とかやっていけるんだ」「お前がギャアギャアうるさいから飲むしかない」…。

「やめない言い訳」を喋らさせたら、依存症者の右に出る者はいないだろう。

こうして適切な対処がされないまま何年もの月日が過ぎ、取り返しのつかないところまで行き着く人は多い。

無力を認めて、新しいやり方を試さなければならない

「無力を認める」「降伏する」
といった言葉には、なんとなく「負け」「諦め」を連想させるイメージがつきまとうため、ネガティブなイメージを持つ人も多いだろう。

ステップ1の「 私たちは嗜癖(アディクション)に対し無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた」という文言を見て、

A さん
「は?無力なんて認めて諦めたりなんかしたら、余計に依存症がひどくなるじゃないか!?」

と思われる方もいるかもしれない。

しかし、それは誤解である。

ステップ1が伝えたいことは簡単に言えば、

「これまで依存症をうまくコントロールするために同じやり方をずーっと繰り返してきたけど、そのやり方じゃうまくいかなかったよね?だったら違うやり方を試してみてもいいんじゃないかな?」

ということなのだ。

依存症者は、なんとか依存対象をうまくコントロールしながらやっていけないかと無駄な努力を何年も何年も続けてきた。
そのせいで仕事を失ったり、家族と険悪になったり、健康を損なったりしても、見て見ぬふりをしてきた。
自分が病気だとを認めようとしなかったし、本気で自分の問題と向き合うことをしてこなかった。

依存症では、最終的にどうにもならなくなって、絶望の極みに到達したときに「底つき」と呼ばれる現象が起こる。

「もうこのままでは生きていけない……。もうこの苦痛の中にはいっときもいられない!なんでもするから助けてくれ!」

という段階になって、依存症者の強固な「否認」は、やっと突き崩される。

つまり、自分が依存症であることを認めることで、自分と向き合い、前向きな解決策(治療に繋がる、プログラムを実践する)を選ぶことができるのだ。

依存症という病気は、「自分が病気である」と認めるところまでが一番難しいのである。

ここを認めることができれば、ステップ2に進むことができるのだ。

初心者のための12ステップ講座:ステップ2「自分以外の力を信じる」

2018年5月12日

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