初心者のための12ステップ講座:はじめに

12ステップ

今回から、12ステッププログラムについて、ステップ1から順に自分の考えや体験などを交えながら紹介していきたいと思う。

1.日本では超マイナーな12ステッププログラム

こんなことを思いついたのは、ひとつには12ステップ自体が日本人に馴染みがなく、ほとんど知られていない現実があるからだ。

欧米では各種依存症や強迫行為に効果があることが実証されており、自助グループの数も非常に多く、たくさんの人達がプログラムを実践して回復しているが、日本ではほとんど知られていないし、ネット検索しても僅かしかヒットしない。

そもそも日本では、自助グループの存在自体が一般に知られていない。

依存症が「病気」であるという認識も広まっていないし、12ステッププログラムが回復に有効だということももちろん知られていない。

日本において、依存症患者の数は非常に多いが(アルコール依存257万人、ギャンブル依存536万人)、自助グループに繋がることのできる患者の割合はごくわずかである。

そのような状態だから、日本の依存症者はまず「自助グループの存在を知る」というところからしてハードルが高く、さらにグループに繋がり続けて12ステップを実践し、更に回復した人となると非常に限られた数しかいないのがおわかり頂けると思う。

2.自助グループに繋がっても、どうやって12ステップをやればいいのかが分からない

また、日本における自助グループでは、12ステッププログラムのやり方が体系的に継承されていない現実がある。

例えば、

A さん
12ステップはやらなくても、ミーティングに行ってさえすれば回復するよ
B さん
ステップは1、2、3までやれば良くて、あとはやってもやらなくてもいいよ
C さん
ステップ1,2、3は繰り返すステップだからね
D さん
ステップは順番にやらなくてよくて、1~12を同時にやるものだよ

という風に、人によって言っていることがバラバラで、ニューカマー(新しくグループに繋がった人)はどれを信じていいのか分からない状態だ。

事実、上に書いたセリフは、すべて私自身がミーティングの先ゆく仲間に実際に言われたことである。だから最初は非常に混乱した。

いったい誰の言うことを信じたらいいのか?

当時の私はスポンサー(※)もいなかったし、頼るべきものといえば主に自助グループ関係の書籍しかなかった。

(※)スポンサー:自助グループの中で自分が選ぶ相談役、導き手のような存在。回復していて経験豊富なメンバーが選ばれることが多い。12ステッププログラムを手渡してくれる存在とされる。手渡される側は「スポンシー」という。

AA(アルコホーリクス・アノニマス)の基本テキストである「ビッグブック」、NA(ナルコティクス・アノニマス)の「今日だけ」、ACA(アダルトチルドレン・アノニマス)の「ACのための12ステップ」が私の愛読書だった。
(※「今日だけ」と「ACのための12ステップ」はそれぞれのWebサイトで購入できます)

これらの本は、依存症やACの問題について鋭い考察をしていて興味深い内容だったし、何度も何度も読み込んだ。

そうこうしているうちに、私の地元にも12ステッププログラムをアカデミックに学ぶセミナー(ファミリーダイナミクスプログラム)が開かれたり、スポンサーもできたりして、今まで独学で12ステップをやってきた私にも、それなりにステップを実践するチャンスに恵まれた。

12ステップを実際に1から12まで踏んでみて思ったことは、「このプログラムは効く」ということだ。

私は思春期の頃から十数年間、処方薬依存症とアダルトチルドレンの問題で苦しんできた。

「心の平安」なんて言葉には全く縁がなく、いつも人間関係や仕事、体調のことで何かしらの問題を抱えていたし、自殺未遂を何度も繰り返していた。
いつもすさまじい焦燥感と緊張、不安に囚われていて、他人と打ち解けることができなかった。

その辛さをごまかすために、さらに処方薬を大量に服用する、ということを繰り返してきた。

その私が、ステップを踏むことで人生が劇的に変わったのだ。

こんなことを書くと「うさんくせぇ」と思われる人もいるかもしれない(^_^;)

だが、事実、私は12ステッププログラムを実践するようになってから、どうしてもやめられなかった処方薬が止まり、次いで酒が止まり、煙草が止まった。

家庭環境の面でも、両親、特に父親を殺したいほど恨んでいたのだが、徐々にではあるが関係が修復され、許せるようになってきた。

緊張して人とうまく接することのできない自分が大嫌いだったのだが、そういう自分を許せるようになってきた。簡単に言うと、ダメな自分も、良い自分も、等しく自分であると肯定できるようになってきたのだ。

自分を肯定できるようになると、他人のことも信じられるようになってくる。
私は少しずつ他人に対して心を開くことができるようになっていき、人との交流を楽しむようになった。

一時期は処方薬依存症で身も心もボロボロになり、ひきこもりも経験し、精神病院にも入院したが、今では曲がりなりにも嗜癖(アディクション)から回復して、社会復帰をして働けるようになった。

ただ社会復帰できただけではなく、それまで片時も離れなかった「生きづらさ」が減ってきた、というのが最大の収穫だった。

もちろん嗜癖(アディクション)から解放されたからといって、人生バラ色になるわけはない。

相変わらずトラブルは起こるし、落ち込んだり悩んだりもする。

しかし、今は相談できる仲間も出来たし、12ステップという道具もある。

嫌なことがあってよろめいても、嗜癖に頼ることなく、なんとか立ち直って前に進めるようになったのだ。

大げさかもしれないが、私は30歳を超えて初めて「自分の人生」を生きられるようになったと思っている。

それまでは常に他人に振り回され、他人が中心だったのだが、やっと「自分を大事にする」ということを学び始めた。

生まれて初めて「心の平安」というものを味わえるようになってきたのだ。

もちろん、回復できたのは12ステップが全てだと言うつもりはない。

他にも色々な要素が絡んでいたことは確かだが、それでも、私の中で12ステップはかなり大きな比率を占めていたのは間違いない。

3. 12ステッププログラムは料理のレシピのようなもの

さて、肝心の12ステッププログラムだが、以下に自助グループで使われている原文を記す。

1.私たちは、○○に対して無力であり、生きていくことがどうにもならなくなったことを認めた。
(※ ○○の中には特定の嗜癖、アルコールや薬物、ギャンブル、特定の人間関係への囚われなどの強迫行為が入る)

2.私たちは、自分より偉大な力が、私たちを正気に戻してくれると信じるようになった。

3.私たちは、私たちの意思といのちを、自分で理解している神(ハイヤーパワー) の配慮にゆだねる決心をした。

4.私たちは、探し求め、恐れることなく、モラルの棚卸表を作った。

5.私たちは、神に対し、自分自身に対し、もう一人の人間に対し、自分の誤りの正確な本質を認めた。

6.私たちは、これらの性格上の欠点をすべて取り除くことを、神にゆだねる心の準備が完全にできた。

7.私たちは、自分の短所を取り除いてください、と謙虚に神に求めた。

8.私たちは、私たちが傷つけたすべての人のリストを作り、そのすべての人たちに埋め合わせをする気持ちになった。

9.私たちは、その人たち、または他の人びとを傷つけないかぎり、機会あるたびに直接埋め合わせをした。

10.私たちは、自分の生き方の棚卸を実行し続け、誤ったときは直ちに認めた。

11.私たちは、自分で理解している神との意識的触れ合いを深めるために、私たちに向けられた神の意志を知り、それだけを行っていく力を、祈りと黙想によって求めた。

12.これらのステップを経た結果、スピリチュアルに目覚め、この話をアディクトに 伝え、また自分のあらゆることに、この原理を実践するように努力した。

このプログラムは、ハイヤーパワーとか、「神」とか「スピリチュアル」とかいう単語がよく出てくるので、精神論が幅を効かせてるような印象を受けるかもしれないが、そうではない。

12ステッププログラムは、料理のレシピと同じようなものだと思ってもらえばいい。

ビックブックにも書いてある通り、やる気をもって取り組み、ちゃんと自分自身に正直になり、きちんと手順を踏めば、誰がやっても同じ結果が出る、とされる。
プログラムは1から12まで、とばさずに順番にやることが大事だ。

・ハイヤーパワー(自分より偉大な力)の概念の重要さ

ちなみにハイヤーパワーとは、単なる「神」ではなく、AAの創始者、ビル・ウィルソンがビッグブックの中で書いているような、私達のことを知り、愛し、そして気にかけてくれる個人的な神のことだ。

依存症者やアダルトチルドレンは、これまでの人生でなにもかも自分で取り仕切り、コントロールし、思い通りにしようとしてきた人達が多い。
過剰なコントロール欲求は、私達の心をささくれ立たせ、イライラや怒り、思い通りにならなかったらどうしようという恐れを引き起こす。そのような心持ちは、家族関係や人間関係にもトラブルを生じさせることが多い。
そういった痛みを和らげるために、依存症者はアルコールや薬物、ギャンブルを使ってなんとか切り抜けてきたのだ。

ハイヤーパワーという概念は、病的なコントロール欲求を手放し、「なるようになるさ」という心持ちになれるのを手伝ってくれる、一種の「考え方」「ツール」として捉えてもらったらいいと思う。
血まなこになって何もかも自分の思い通りにしようとするより、時には大きな流れに身を任せたほうが、物事や人間関係はうまく運ぶものだということを、ハイヤーパワーは教えてくれるのだ。

4.「有害な習慣、心の癖」からの解放

このプログラムが目指すのは、簡単に言えば「有害な習慣、癖からの解放」である。

依存症やアダルトチルドレン、共依存の問題というのは、突き詰めれば「心の癖」なのである。

しかし、問題なのは、それらの「癖」が自分にとって害になっているのに、もはや自分の意思など到底及ばないほど強固なものになっており、自分自身の生活を破滅に向かわせているのにやめることができなくなっている、という点だ。

先程、12ステッププログラムを記したが、もともと英文を訳したものだから分かりにくいところもあると思う。

もっと簡潔に言えば、12ステップはこういうことである。

・自分には(依存症、AC、共依存などの強迫的な)問題があることを認め、自分の力ではやめられないと認める(ステップ1)

・自分以外の力に助けを求め、委ねる(ステップ2、3)

・徹底的に自己分析し、それを紙に書いて表にする(ステップ4)

・信頼できる人に自分のことをありのままに打ち明ける(ステップ5)

・自分の欠点を取り除くための努力をする(ステップ6,7)

・今まで傷つけた人をリストアップし、埋め合わせをする(ステップ7,8)

・1~8までのステップを使って自分自身のメンテナンスをし続け、日々祈りと黙想を実践する(ステップ10、11)

・回復を望んでいる依存者(アディクト)の手助けをし、このプログラムを伝える(ステップ12)

「とりあえずミーティングに出ていれば回復するよ」という人もいるが、私はかなり疑問に思っている。

確かにそういう人も中にはいるかもしれないが、やはりせっかく自助グループに来ているのだから、このプログラムを実践しないのは損だと思う。

もちろん、このブログで紹介してるのが「正しい12ステップ」と言うつもりはないし、私自身もステップを踏み続けている最中だから、意見などあったら教えていただきたく思う。

が、冒頭にも書いたとおり、日本ではかなり12ステップがマイナーなので、今苦しんでいる依存症者やアダルトチルドレンの方たちにとって、このブログが回復のヒントになってくれれば幸いである。

次回からは、不定期にではあるが、1から12まで、それぞれのステップについての紹介をしていこうと思う。

ブログランキングに参加してます。よろしければ応援クリックお願いします
ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

スポンサーリンク
スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です